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相続権を剥奪!~相続廃除~

すみだ

こんにちは。

今日は相続廃除を見ていきましょう。

ユキマサ

前回の相続欠格と似てるよね。


目次

相続廃除って何?・・・相続させたくない人がいる時の最終手段を解説

相続は、家族にとって大切な財産が引き継がれる、本来は円満に行われるべき手続きです。しかし、中には「どうしてもこの人には財産を渡したくない」と思うほど、ひどい行為を受けた経験がある方もいるかもしれません。

そういった場合に検討されるのが「相続廃除(はいじょ)」という制度です。これは、特定の相続人から強制的に相続権を奪うことができる、非常に強い効力を持つ手続きです。

「でも、具体的にどんな時に使えるの?」「どうすれば廃除できるの?」と疑問に思うかもしれませんね。この記事では、相続廃除がどのような制度なのか、どんな条件で、どのように手続きを進めるのかを、分かりやすく解説します。もしあなたが「相続させたくない相手がいる」と悩んでいるなら、ぜひ最後まで読んで、この制度について理解を深めてください。


相続廃除ってどんな制度?→相続人から「相続権をはく奪」すること

まず、「相続廃除」の基本的な考え方から見ていきましょう。

相続廃除とは、被相続人(財産を遺す人)が、特定の推定相続人(相続人になるはずの人)に対して、家庭裁判所に申し立てることで、その相続人の相続権を強制的に剥奪する制度です。

通常の相続では、民法で定められた法定相続人は、原則として相続権を持っています。たとえ生前に被相続人と関係が悪くても、相続権は自動的には失われません。しかし、相続廃除は、被相続人の強い意思によって、相続人としての権利を失わせることを可能にするものなのです。

ポイントは、被相続人からの「働きかけ」が必要である点です。 後ほど詳しく解説する「相続欠格」とは異なり、自動的に相続権が失われるわけではありません。家庭裁判所での手続きを経て、認められればその相続人は相続財産を受け取ることができなくなります。また、遺留分(相続人が最低限保障されている相続分)も請求できなくなります。


こんなひどい行為が対象!相続廃除の「条件」

相続廃除が認められるには、民法で定められた特定の条件に該当する必要があります。どんなに「相続させたくない」と思っていても、単に関係が悪いだけでは認められません。

具体的には、以下のいずれかに該当する行為が認められる場合に、相続廃除が考慮されます。

  1. 被相続人に対する虐待があった場合
    • 例: 身体的な暴力をふるわれた、精神的な嫌がらせを執拗に受けた、介護を拒否されたなど、被相続人の生活を著しく困難にするような行為。
  2. 被相続人に対する重大な侮辱があった場合
    • 例: 公衆の面前で被相続人の名誉を著しく傷つける行為を行った、不当に悪口を言いふらしたなど、社会生活を送る上で耐えがたいほどの精神的苦痛を与えた行為。
  3. 推定相続人に著しい非行があった場合
    • 例: 遺産を浪費したり、借金を繰り返したりして、被相続人の財産を著しく減少させた、犯罪行為を繰り返して家族に多大な迷惑をかけた、などの行為。
    • ここでの「非行」は、社会通念上許容できないほどのひどい行いを指します。

これらの行為は、単なる親子喧嘩や意見の対立といったレベルではなく、被相続人と相続人との間に築かれるべき信頼関係を根本から破壊するような、非常に悪質な行為である必要があります。家庭裁判所は、これらの行為があったかどうかの事実だけでなく、その程度や継続性なども総合的に判断します。


相続廃除の具体的な「手続き方法」

相続廃除の手続きは、以下のいずれかの方法で行います。

(1) 生前に家庭裁判所に申し立てる方法

被相続人が生きている間に、自ら家庭裁判所に「相続廃除の審判の申立て」を行います。

  1. 申立書の提出: 家庭裁判所に必要な書類(申立書、戸籍謄本など)を提出します。
  2. 調停・審判: 裁判所は、まず調停(話し合い)を試みます。調停で合意できない場合や、調停になじまない場合は、審判(裁判官の判断)に移行します。
  3. 審判確定・届出: 相続廃除が認められ、審判が確定したら、被相続人(または代理人)が本籍地または住所地の市区町村役場に、その旨を届け出る必要があります。戸籍に廃除の事実が記載されます。

(2) 遺言書で意思表示をする方法

被相続人が遺言書に相続廃除の意思と理由を記載しておく方法です。

  1. 遺言書の作成: 遺言書(公正証書遺言など、法的に有効な形式で)に、廃除したい相続人の氏名と、廃除を希望する理由を具体的に記載します。
  2. 死亡後の申立て: 被相続人が亡くなった後、遺言書に記載された「遺言執行者」が、家庭裁判所に相続廃除の審判の申立てを行います。遺言執行者が指定されていない場合は、相続人などが申し立てます。
  3. 審判確定・届出: 家庭裁判所で廃除が認められ、審判が確定したら、上記と同様に役場への届出が必要です。

どちらの方法も、家庭裁判所の審判が必要になるため、時間と手間がかかります。また、必ず認められるとは限りません


相続廃除になるとどうなる?その後の影響

相続廃除が認められると、以下のような影響が出てきます。

  • 相続権の喪失: 廃除された相続人は、その相続において一切の相続権を失います。法定相続分はもちろん、遺留分(最低限保障される相続分)も請求できなくなります。
  • 代襲相続の発生: これが重要なポイントです。相続廃除された相続人に子がいる場合、その子は代襲相続人として財産を相続する権利を得ます
    • 【例】 父親が相続廃除されたとしても、その父親の子ども(被相続人から見て孫)は、祖父母の財産を相続することができます。これは、子の責任を子孫に及ぼさないという考え方に基づいています。

相続廃除と間違いやすい「相続欠格」との違い

相続廃除とよく似た制度に「相続欠格(けっかく)」があります。この二つは混同されやすいですが、明確な違いがあります。

項目相続廃除相続欠格
発生要因被相続人に対する虐待、重大な侮辱、著しい非行など民法に定められた不正な行為(例:殺害、遺言書偽造など)
効力発生家庭裁判所への申立てと審判によって発生行為があった時点で自動的に発生
代襲相続発生する発生する
誰が手続き被相続人(または遺言執行者)が家庭裁判所に申立て手続きは不要
目的被相続人の意思を尊重し、相続させたくない人を排除相続の公正さを守る

簡単に言えば、相続廃除は「被相続人の意思に基づいて裁判所が判断する排除」で、相続欠格は「法律が定めた重大な不正行為があった場合に自動的に失格」となる制度、ということです。


本当に「最終手段」として考える制度

相続廃除は、被相続人の強い意思を尊重するための制度ですが、相続人の権利を剥奪する非常に重いものです。そのため、家庭裁判所での審査も厳しく、簡単に認められるものではありません。

もし、「特定の相続人に財産を渡したくない」と真剣に考えているのであれば、まずはその理由が相続廃除の条件に該当するかどうか、ななほし行政書士事務所にご相談ください。遺言書の内容を工夫する、生前贈与を検討するなど、相続廃除以外の方法で対応できるケースもあります。

トラブルを避けるためにも、相続に関するお悩みは早めに解決策を検討していくことが大切です。


すみだ

相続廃除、できれば使わずに穏便に済ませたいものですよね。

それでは、また。

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